「普通」が危ない!機能不全家族と隠れ機能不全家族
わたしのお客さまには、DV・ネグレクトなどがある、いわゆる機能不全家族ご出身の方もいれば、外から見るとなんの問題もないようなごく普通のご家庭(むしろ恵まれてると言われるようなご家庭も含む)に生まれ育ったにも関わらず生きづらさを抱え込む人(隠れ機能不全家族育ち)もいらっしゃいます。
今回は、両者のちがいをまとめてみました。
いわゆる機能不全家族ご出身の方を前者。それ以外の方を後者として解説します。
- 前者:DV・ネグレクトなどがある、いわゆる機能不全家族ご出身で生きづらさを抱えている方
- 後者:前者以外の一見すると目立った問題のないご家庭ご出身で生きづらさを抱えている方
さて、みなさんが生まれ育ったのは、どちらのご家庭でしょうか?
↓↓機能不全家族についてはこちらの記事で解説しています。
▶隠れ「機能不全家族」の実態 ~夫の実家から学んだこと~
目に見える問題の有無
DV(家庭内暴力)・ネグレクト(育児放棄)・アルコール依存や薬物依存など、児童相談所が動くような問題があるのは、もちろん前者です。
程度は人により、全員がテレビなどで目にするような悲惨な状態であるとは限りませんが、誰の目にも「家庭に問題がある」とわかるような環境です。
一方で後者は、そういったこととは一見すると無縁なご家庭がほとんどです。
外からは、立派なご両親と優秀なお子さん、みたいに理想的な一家に見えていることも多いです。
でもそこには、表面化しにくい問題があります。
- 直接的な暴力はないけど、親の言葉遣いがキツイ・荒い。
- 陰口や愚痴が多い。
- 夫婦不仲・嫁姑バトルなどがある。
- ネグレクトというほどではないけれど、親が子どもに共感できていない。嘲笑する。一緒に遊ぶのが苦痛に感じている。
- 子どもをひとりの人間として尊重しない。
- 逆に過保護・過干渉。親の先回りグセ。
- きょうだい差別
- 共依存(親子、両親、母親と実母)
- 外面が良く、体裁を気にする。家の中と外で言動がまったく異なる。など。
問題発覚の時期
前者は、早ければ子どものうちに周りが異変に気付き、問題が発覚します。
現在は、189(児童相談所虐待対応ダイヤル)も開設され、問題がより表面化しやすくなっています。
そこまでに至らなくても、思春期を迎えるころには、友だちの家とのちがいを見て自分の家庭の問題を察する人がほとんどです。
そして、ある程度おとなになるまでどうにか凌いだとしても、10代後半、20代前半あたりで摂食障害やパニック障害・うつ病などの精神疾患や体調不良などを発症される方がとても多いです。
わたしのところに来られる前にも、通院歴やカウンセリング歴のある方の割合が高いです。
一方後者は、前者と比べると問題の発覚が大幅に遅れがちです。わたしの感覚では、30代後半~40代が最も多いです。
- 結婚して義理の実家と比べてみたときに、はじめて自分の家の問題に気づいた。
- 里帰り出産したときに、母親と口論になり、これまでの思いが一気にあふれた。
- 子どもが不登校になり、あれこれ調べているうちに、自分の心の問題かもと思うようになった。
- 親の介護がはじまって、小さい頃からため込んできた怒りでどうしても優しくできない。
- 親が亡くなって、いろんなことを思い出すようになった。
こんな風に、何らかのライフイベントをきっかけに、ご自分の生まれ育った環境に問題があったのかもしれないと思い至る方が大多数です。
それまでも人間関係で苦労したり、生きづらさを感じていたりしたものの、それが幼少期の問題とリンクしていなかったという人がほとんどで、カウンセリングなどを受けたことが無い人もたくさんいらっしゃいます。
子どもはみんな基本的に自分の生まれ育った家のことしか知りませんから、おおきなできごとが無ければ、そこがスタンダードになってしまい、なかなか問題には気づけないものです。
幼少期の問題の受け入れ
インナーチャイルドの本当の声は、どの人ももれなく「お母さん大好き」です。
そのことに気づいていない人もいますが、前者も後者ももれなく、親に対して大きな愛情を抱いています。
でも、前者の場合「親のせいで生きづらい」という自覚がある分、表面的には親に対して「ちゃんと育ててほしかった」と怒りを感じている人が大多数です。
中には、「親なんていなくなればいい」「早く死んでほしいと思っている」などと過激な発言をする方もいます。
そしてわたしが、幼少期のご家庭での問題がおとなになってからの生きづらさにつながることをご説明すると、「そりゃそうですよね」とすんなり受け入れてくださることがほとんどです。
幼少期の問題を受け入れるのに、そんなはずはないなどと抵抗感を示される方はまずいません。
逆に、後者の場合「ちゃんと育ててもらった」という感謝の思いを前面に出される方が多いです。
感謝の思いが悪いわけではないのですが、そのために問題を自覚しにくい傾向が強いです。
幼少期のご家庭での問題が今の生きづらさに繋がっていることをご説明すると、はじめのうちは頭では理解しても心が追い付かないという人がほとんどで、自分事として落とし込んでいくのには時間がかかります。
「まったく問題が無いとは思わないけれど、でも、親も大変な中苦労して育ててくれたんです」と親御さんを擁護しようとする方が非常に多いです。
インナーチャイルドケアへの取り組み
前者がインナーチャイルドケアをするうえでよく障壁になるのが、「なんで親が悪いのに、わたしがこんなことしなくちゃいけないの」という理不尽な気持ち。
「親がちゃんとわたしを育ててくれていればこんなに苦労はしなかったのに」と考えているので、自分でお金を払ったり時間を費やして講座を受けたりすることに、損をしたような気持でいることが多いです。
「自分がやらなくては誰もやってくれないんだ」と腹を括って向き合えるかどうかが、生きづらさを手放せるかどうかの分岐点です。
後者にとっての障壁は、「こんな風に思ったら、一生懸命育ててくれた親に申し訳ない」という罪悪感や、「こんなことをしたところで、今の生きづらさは変わらないのではないか」という猜疑心です。
インナーチャイルドケアをしようと思っても、親の顔がチラついたり、悪いものに騙されているような気持になったりして、なかなかケアに集中できない人も多いです。
幼少期に負った心の傷が今の生きづらさに繋がっているのだということを自覚して、しっかり向き合えるかどうかが生きづらさを手放せるかどうかの分岐点です。
癒しのスピード
一見すると前者の方が手こずりそうにも思えるかもしれませんが、前述のとおり親の問題を受け入れるのに時間がかからないので、「自分でトコトンやってやる!」というスイッチさえ入ればすぐに本腰を入れて取り組むことができるのが強みです。
親との距離感が遠い人が多いのも、取り組みやすい理由のひとつかと思います。
もちろんトラウマが大きいので癒しの道のりは簡単ではありませんが、中には「あんなにこじらせてたのにあっけなかったね」と驚くほどのスピードで生きづらさを手放していかれる方もいます。
一方で、後者はトラウマ自体はさほど大きくなくても、親への罪悪感や周りの目などが邪魔して本気で取り組むまでに時間がかかる人が多いです。
「あの人ほどこじらせてないし」「今はそれほど生きづらいわけでもないし」なんて、なんやかんや理由をつけて、問題に向き合うことを先延ばしにしてしまいがちです。
また、一度癒しを進めても、親との距離感が近いがゆえに親のひとことで引き戻されてしまう人もいます。
本気で取り組んでしまえば、前者の人ほど大変ではないはずでも、なかなか本気になれないし、リバウンドしやすいのが苦しいところです。
というわけで、生きづらさを感じなくなるまでにかかる時間は人それぞれで、前者・後者どちらかが早く楽になるかはわかりません。
どちらの方も、本気で取り組んだ人だけが変わっていかれます。
癒しが進んだ人たち
癒しがある程度進んでくると、前者と後者は似てきます。
癒し始めた当初、前者は後者に対して「たいして苦しんでもいないくせに」とどこか敵対しているようなところがあります。
後者は後者で、前者に対して「わたしはあの人たちとはちがう」とどこか境界線を引いているようなところがあります。
でも、癒しが進んでくると、前者には前者なりの苦しみが、後者には後者なりの苦しみがあり、どちらが大変でどちらがマシということではないのだとわかってきます。
そのようにして他者理解が進み、相手を尊重できるようになったとき、自分も相手も同じなんだと気づきます。
そして、家庭環境に関わらず、みんな大変な思いをしておとなになって今を生きているとわかると、自分とちがう価値観を持った人たちが愛おしい存在になってきます。
つまり、自分で自分を癒せる人になれば、機能不全家族出身であろうとそうでなかろうと、誰もがお互いを尊重し、しあわせになることができるのです。
まとめ
機能不全家族と隠れ機能不全家族のちがいについて解説してみました。
- 前者:DV・ネグレクトなどがある、いわゆる機能不全家族ご出身で生きづらさを抱えている方
- 後者:前者以外の一見すると目立った問題のないご家庭ご出身で生きづらさを抱えている方
比較 | 前者 | 後者 |
---|---|---|
目に見える問題 | あり | なし |
問題発覚の時期 | 早い | 遅い |
問題の受け入れ | 簡単 | 難しい |
取り組みの障壁 | 理不尽さ | 罪悪感・猜疑心 |
癒しのスピード | 人それぞれ | 人それぞれ |
どこまでが機能不全家族で、どこからが隠れ機能不全家族かというボーダーは無いので、あくまで傾向の話になります。
また、ご本人の生まれ持った特性も大いに影響しており、HSPや発達障害など感受性の高い気質の方は後者であっても、おおきな心の傷を抱えていたりするので、ご家庭環境だけではどちらとも言い切れないところもあります。ご参考として見ていただければ幸いです。
わたしの感覚的には、前者の方は問題を自覚したあとからの癒しが大変で、後者の方は問題を自覚して本気で向き合うまでに時間がかかる方が多いです。
特に、自分の生まれ育った家庭のことを「普通」と思い込んでいる人ほど、自覚に時間がかかり、結果ずっと生きづらさを抱えたままだったりしますので、この機会に一度、ご自分の幼少期を振り返ってみてください。
人は生まれ育った家庭環境に関係なく、自分でしあわせになると決めれば、そこに向かっていけます。
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