「ズルい!」が言えなかった子 ~きょうだい児の苦しみ~
わたしのお客さまの「みさきさん(仮名・30代・女性)」は、いわゆる「きょうだい児」でした。
きょうだい児とは、「障がいや重い病気など、特別なケアが必要な兄弟姉妹がいる子ども」のことです。
みさきさんからお伺いしたお話を、ご本人の許可を得て、個人の特定ができないよう多少情報を変更して、お伝えしたいと思います。
わたしには、3歳下に、知的障がいと発達障がいのある弟がいます。
弟が生まれたばかりの頃は、障がいのことはわからず、両親も「あまり泣かない子」「しゃべり始めるのが遅い子」くらいの認識しかなかったそうです。
わたしにとっても待望のきょうだいだったので、うれしくて積極的にお世話をしてました。周りのおとなたちからは、「さすがお姉ちゃん」とよく褒められていました。
その後、弟の3歳児健診で知的障がいと発達障がいがわかり、そこから家の中の空気が一変しました。
それまで明るかった母は、落ち込むことが増えていきました。今思えば、自分のせいだと責めていたんじゃないかなと思います。
それでも母は弟の前では気丈に振舞い、弟のためにできることをしようと、あちこちに奔走していました。
病院や早期療育、障がい児を持つ親の集いなどにも積極的に参加して、弟とふたりで出かけることも増えました。
わたしはその頃もう小学生だったので、学校から帰るとひとりで留守番をしていることが多かったです。
帰ってくると母は決まって、「ごめんね!すぐごはん作るから!」と言って急いでキッチンに向かっていきました。
わたしは母が大変なのをわかっていたし、弟もかわいそうなことは理解していたので、文句を言ったり、さみしい気持ちをぶつけたりすることはありませんでした。
インナーチャイルドケアを始めたきっかけ(表出していたお悩み)
みさきさんが入門講座に来てくださった理由は、「会社の人間関係に悩んでいる」ことでした。
「上司が後輩ばかりをひいきしていて、居場所が無い感じがする。」
はじめは、そうおっしゃっていました。
みさきさんは、職場でたびたび疎外感を感じ、上司がかわいがっている後輩のAさんに対して「なんであの子ばっかり」と思っていました。
「仕事が嫌いなわけじゃないけど、会社に行くのがなんとなく憂鬱。後輩に嫉妬している自分のことも大嫌い。」
そう感じたのが、心のケアをはじめようと思ったきっかけです。
その後、講座の中で幼少期のことを振り返っていくうちに、みさきさんのインナーチャイルドは本音を話し始めます。
インナーチャイルドの本音(ため込んだ感情)
ケアを進めると、みさきさんの中には、たくさんの「お母さんに言えなかった思い」=「未消化の感情」がため込まれていることがわかってきました。
子どものころに、お母さんと弟さんの姿を見ていて疎外感を感じ、弟さんに対して強く嫉妬していたのに、「お母さんは大変」「弟はかわいそう」と自分に言い聞かせて、表出させることなく、ギュっと閉じ込めていたのです。
- お母さん、わたしのこともっと見て!
- わたしだってお母さんに甘えたいよ!
- 弟ばっかりズルい!
- あの子なんていなければいいのに。
- こんなこと思っちゃうわたしって最低だ、、
みさきさんのインナーチャイルドは、お母さんに甘えたい気持ち、でも困らせてはいけないという気持ち、弟を邪魔に思う気持ち、そんなことを思ってはいけないと自分を責める気持ち、、いろんな気持ちが交錯して苦しんでいました。
もちろん、障がい児を抱えたお母さまも弟さんご自身も大切なのは言うまでもないことです。
でも、その陰でまだ幼かったみさきさんが、密かに傷ついていたことも事実です。そして、それを誰にもケアしてもらえなかったことも事実です。
お母さんが大変だからといって、弟さんが気の毒だからといって、みさきさんが傷ついていないわけではないのです。
過去と今がリンクする瞬間(感情の再体験)
会社で、上司と後輩に感じているモヤモヤの正体。
それは実は、みさきさんが子どものころに抑圧した「未消化の感情」の再体験です。
一見すると、お母さんや弟さんとのことは過去のことで、今のみさきさんの生活になんら影響を与えていないように思えるのですが、実は心の奥深くでつながっています。
感情を未消化のまま閉じ込めてしまうと、体内に「感情の老廃物」として残り、おとなになってからの対人関係などに不調和をもたらします。
みさきさんが会社で体験していることは、お母さんにわかってほしかった気持ちが、場所を変え、相手を変え、形を変えて再び表出しているにすぎないのです。
だから、目の前の問題を乗り越えようと、無理にがまんを続けたり、気を逸らすようなことをしても意味がないのです。
「感情の老廃物」のデトックス(インナーチャイルドケア)
インナーチャイルドケアメソッド®では、このようにため込んだ感情が表出してくることを、「癒しのチャンス」と捉えます。
せっかく出てきた「感情の老廃物」を、もう一度閉じ込めてしまうことの無いよう丁寧に扱っていきます。
インナーチャイルドの声に耳を傾け、あのとき、お母さんに言えなかった気持ちをそのまま救い上げて、丁寧に感じて癒していきます。
インナーチャイルドがずっと閉じ込めていた本音を言えたとき、奥の方からこみあげるジーンとした感覚のあと、不思議と心が軽くなります。
みさきさんのインナーチャイルドが「ズルい」と言えたとき、ようやくその感情がみさきさんの中から取り出され、インナーチャイルドは苦しみから解放されるのです。
そして、自然と外の世界も穏やかなものに変容していき、職場での人間関係に前ほど悩んでいないことに気づきます。
誰の中にもある「感情の老廃物」
みさきさんは、「きょうだい児」という少し特殊な幼少期を過ごしましたが、このお話は、きょうだいを持つ多くの人にお心当たりがあるはずです。
わたしたち人間は、生きていればどうしたって、心に傷を負います。
子どものやわらかい心は無傷で育つことなど、不可能なのです。
だから、「未消化の感情」は誰にでもあるあたりまえのもの。
決して機能不全家族や毒親育ちだけの特別なお話ではないということに、このエピソードを通じて気づいていただけるとうれしいです。
あなたがおとなになってから体験する不調和は、すべてインナーチャイルドからのSOS。
子どもの頃にフタをしてしまった感情が見せている景色です。
インナーチャイルドケアで「感情の老廃物」をデトックスすれば、インナーチャイルドが癒され、あなたの心も軽くなります。
そして、逃げずに向き合い続ければ、目の前の問題も必ず解決に向かっていきます。
いつも同じようなパターンを繰り返している、どこにいっても同じようなタイプの人に悩まされている。
そんなときには、インナーチャイルドとじっくり向き合うタイミングなのかもしれません。
インナーチャイルドケアメソッドで、たまった感情のデトックスをしてみませんか?