感情はいつも出口を探してる
人が誰かや何かに対してネガティブな感情を抱くとき、思わぬところでいろいろつながっているんです。
わたしたちは、それが本当に目の前の人に向けたものなのかを注意深く観察する必要があります。
また、普段から小さなストレスをため込まないことも大切です。
感情は蓄積されていく
会社員Aさんの話。
月曜の朝。会社に着いてメールを開いたら、今日中にやらなきゃいけない仕事の依頼がたくさんきている。
もっと早く言っておいてくれればいいのに。いつもわたしがしわ寄せを受ける。
さっさと気持ちを切り替えて仕事をしたいのに、なんでこんなにイライラしちゃうんだろう。仕事がぜんぜん手につかないや。
そこに後輩Bさんが書類のチェックを頼みにきた。
誤字脱字だらけて体裁もめちゃくちゃ。思わず「こんなんじゃ見る気にもなれない」と突き返してしまう。
「言い過ぎた!」と思ったときには手遅れ。
普段優しいAさんなだけにBさんショックを受け、その場でポロポロと泣き始めてしまった。
と、そんなAさん。実は出勤前にこんなことがありました。
前日の夜に見た悲しいニュースが頭から離れず寝不足。
ぼーっと朝食を食べているときに、うっかりお気に入りのスカートにコーヒーをこぼしてシミができてしまい、慌てて拭いたけど落ちなくて、結局着替える羽目に。
それで少し遅れて家を出たら、いつも乗る電車には間に合わず1本後の電車に乗ることに。
そしたらやたら混んでて、その上、隣に立っていた男性が何度も咳をしていた。
Aさんがイライラを自覚したのは会社についてからですが、実はモヤモヤはきのうの夜から繋がっています。
目の前に「仕事」というおおきな問題がやってきてようやく自分の様子がおかしいことを自覚していますが、実はその前からいろんな感情が沸いているのを見て見ぬふりでがまんしていたんです。
この話はわたしの造作で、とある会社員女性の朝のひとコマを書いてみたんですが、このようにして普通に暮らしている間に、感じそびれた感情が知らず知らずのうちに自分の中に蓄積されていってしまうものなんです。
ため込んだ感情は層のように重なり、出口を探してさまよっています。
運転席に座ると人格が変わる人
うちの夫は、運転席に座るとやや性格が荒くなります。(これは実話ですw)
急に車線変更してくる車に向かって、「うわっ、なんだよこいつ!」って言います。
そのくらい普通じゃん、と思うかもしれませんが、彼は普段ひとのことを「こいつ」とか「あいつ」とか言いません。他人に対して、わたしの100倍くらい寛容です。
これは、運転というある種の緊張状態にあることに加えて、密室空間で「相手に絶対聞こえないのがわかっていること」が前提で出てくる言葉です。運転席に座ったときに入る自動スイッチみたいなものですね。
当人にその自覚はなく、目の車のドライバーに本気で怒っているんですが、目の前の車はあくまでトリガー(引き金)に過ぎず、きっとその瞬間までに積み重ねてきた、仕事、わたしw、痩せられない自分w、などへのストレスが積り積もって、ドンと出ているのです。
つまり夫は、運転をしながら、ある意味で普段のストレスを発散させているわけなんですね。
うちの夫に限らず、普段温厚な人が、運転席に座ると人格が変わってしまうのは、そのようなからくりがあるのです。
怒りの集中砲火
運転しているときだけでなく、お店の店員さんにだけやたら強気な人、部下に対してだけ横柄な人、こういう風に場所や相手によって態度を変える人っていますよね。
わたし、20年以上前に某インターネット回線のコールセンターのクレーム対応のバイトをしていたことがあるんです(めっちゃ時給が良かったんですw)。
主に開通工事までに時間がかかることに対する苦情を受けるのが仕事で、朝から晩まで怒鳴られっぱなし。お客さまから「お前のせい子どもが受験に落ちた!」「ネットが繋がらないストレスで妻が流産した!」とか、毎日のように無茶苦茶なこと言われまくったんですよ。
当然そんなのはただの八つ当たりなんですが、その人、そのときは本気で電話の向こうのわたしのせいだと思ってるんですよね。
「こいつなら怒りを出して良し!」という相手を前に自動スイッチが押されて、無意識に選んで発散させているんです。
と、ここまであからさまでなくても、なんとなく相手によって態度を変えてしまうってこと、みなさんにも多少はあるんじゃないでしょうか?
で、そのいちばんの被害者になりやすいのが、なんてったって、弱者。
- 上司にダメだしされたことが納得できなくて、仕事をさぼっている部下を見てブチ切れる。
- 仕事でイライラして帰ってきて、家の中が散らかっていることで妻にひとこと文句を言いたくなる。
- ママ友とうまくいかなくてモヤモヤしているときに、子どもが宿題もやらずゲームしているのを見てカチンくる。
- 彼氏とけんかして帰ってきて、母親の「遅かったじゃない」の一言に「うるさいな!」と言い放つ。
- 夫婦喧嘩をしたあと、スーパーの店員さんのお釣りの渡し方にイラっとしてにらむ。
こういうのってぜんぶ、一度飲み込んだ感情が、自分より立場が弱い(と当人が思っている)人に向かって一挙大放出しているんです。大爆発ドドーン!
怒っているときには頭に血が上って「目の前のこいつが100%悪い!」って思ってるから気づけないんですが、弱者に対する怒りなんて実はほんのわずかで、残りのほとんどは怒れない誰かや何かへの怒りが転嫁されていたりするわけです。
感情は出口を探してさまようマグマ。
この仕組みに気づけないから、いつだって弱者が気の毒なことになってしまいます。
怒りってたいていは集中砲火であって、そのうちのほとんどが八つ当たりなんですよね。
ちいさなモヤモヤを見逃すな!
ご説明したとおり、このような集中砲火が起きるのは、日常生活の中で感情の抑圧を繰り返しているからなんです。
抑圧された感情が出口を探してさまよって、あるきっかけでドンと表に出るわけです。ため込んだ分、爆発のエネルギーは大きくなり、ときに後悔してもしきれないほど、おおきな怒りを出してしまうこともあります。
Aさんで言うと、ニュースの恐ろしさ、スカートにコーヒーをこぼしてしまったときの悲しさや悔しさ、電車が混んでいるときの憂鬱な気持ち、隣の人がせき込んだ時の嫌悪感。
こういう感情に気が付いてつぶさに拾い上げていれば、Bさんに集中砲火することはなかったでしょう。
だから、みなさんにお願いしたいのは、今目の前の人やモノに抱いている感情だと思っても、「実はずっと前から蓄積してきた感情の塊なのかもしれない」という視点を持っていただきたいんです。
今朝のことだけじゃなくて、先週の後悔も来週の不安もひっくるめて。前世も来世もひっくるめて。
そういうごちゃまぜの感情を気づかないままため込んでいないかということに意識を向けてください。
そのためには、できるだけ頻回にインナーチャイルドに話しかけ、「今どんな気持ち?」「困っていることない?」と寄り添ってあげることが大切です。
そしてネガティブな感情を見つけたら、隠したり否定したりせず、「そうかそうか」とそのまま受け入れてあげてくださいね。
おまけ:怒りの集中砲火を浴びやすい人へ
世の中には、怒りの集中砲火を浴びやすいタイプの人と、浴びにくいタイプの人がいます。
そのちがいの解説は今回は省略するとして、浴びやすいタイプの人は幼少期からそのような立ち位置をずっとキープしていしまっていることと思います。
ご自分で気づいてその役割をやめない限り、これから先もどこにいっても、人の怒りを浴び続けてしまうことになりますので、どこかのタイミングでインナーチャイルドケアをしてみてくださいね。
取り急ぎ知っていただきたいのは、あなたに向かって怒っているその人は、なにもあなたに向けてだけ怒っているわけではないということ。
自分以外の人間関係などの中でため込んできたストレスを、「ぶつけやすい相手」であるあなたにロックオンして発散させているんだということを知ってください。
ほかの人に言う勇気も根性もないから、あなたに向かっているだけなんです。
それってめっちゃいい迷惑なんですが、あなただけが怒られているわけじゃないんだって思ったら、ちょっと気が楽になりませんか?
「そっか。この人はわたしにいろんなストレスを集中砲火させてるんだな。わたしはみんなの代表で怒られてあげてるんだ。みんなわたしに感謝してーw」
そのくらい余裕で受け流せたら、怖さも半減しますね^^
怒りを集中砲火しちゃう人も、怒りの集中砲火を食らう人も、みんなみんなインナーチャイルドが傷ついています。
よかったら一緒にケアしませんか?
まとめ
●感情は蓄積されていく。ため込んだ感情は層のように重なり、出口を探してさまよっている。
●怒りは集中砲火する。「ここなら怒りを出して良し!」という場所で自動スイッチが押されて、無意識に場所や相手を選んで発散させている。
●集中砲火の的になりやすいのが弱者。自分より立場が弱い(と当人が思っている)人に向けて一挙放出される。そのほとんどが八つ当たり。
●今目の前の人やモノに抱いている感情だと思っても、「実はずっと前から蓄積してきた感情の塊なのかもしれない」という視点を持つこと。
●怒りの集中砲火をしないためにも、インナーチャイルドに話しかけ、つぶさに感情を拾い上げることが大切。
●怒りの集中砲火を浴びやすい人は、自分だけに怒っているわけではないことを心に留めておこう。
●集中砲火をする人もされる人もインナーチャイルドが傷ついている。インナーチャイルドを癒していこう!