【子育て】親みたいになるまいと思っている人がおちいるワナ
子どもの頃にしていた惨めでさみしい思いを、自分の子どもたちにはさせたくない!
そんな高い志を持つ人が陥りやすい逆親軸のワナについてのお話です。
親は反面教師
生きづらさを感じている方は、「自分が親になったら、ぜったい自分の親みたいにはならない」と固く心に誓っている人が多いです。
わたしのお客さまAさんは、妊娠中からこんな子育て方針を掲げていました。
(※プライバシー保護のため一部情報を変更しています。)
- 完全母乳。
- 離乳食は手作り、おやつも手作り。
- 日中基本テレビは付けず、静かなオルゴールのCDをかける。
- 家の中は常に清潔に保ち、拭き掃除も欠かさない。
- 仕事はせず、幼稚園に通わせる。
- いつも出来るだけ笑顔で子どもに接し、話は遮らず最後まで聞く。
- きょうだい差別はせず、平等に扱う。
- 夫婦仲良く協力して子育てする。
これらは、「自分が親にしてもらえなかったことを子どもたちにしてあげたい」という想いから。
Aさんのご両親は共働き。
お父さまは有名企業に勤める重役で、お母さまは某大学の教授。
Aさんが生まれてすぐお母さまは職場復帰。朝から晩までフルタイム勤務。
Aさんは0歳のときから保育園に預けられ、家でのんびり過ごした記憶も、近所の友だちと遊んだ記憶もありません。
経済的には何の不自由も無かったのですが、家の中はいつも雑然と散らかり、食事もお惣菜がメイン。
お母さんはAさんの話にはまったく関心を示さず、機嫌が悪いと一方的にヒステリックに怒る。
その割に2歳年下の弟には甘々で、ほしがるものはなんでも買い与える。
父親は育児には無関心で、母親に責任のすべてを押し付けている。
夫婦仲は険悪で、夜中に言い争いをしている声を聴くこともしばしば。
それでも世間体を気にして、外では仲良し家族を装い優雅に振舞い、いい車にも乗っていたため、ご近所からは品のいいエリート一家と思われていたそうです。
子どもの頃にしていた惨めでさみしい思いを、自分の子どもたちにはさせたくない。
そんな反面教師の思いが、Aさんの理想のお母さん像を膨らませていきました。
自己嫌悪の日々
そしてAさん無事ご出産を終え、念願の育児スタート。
里帰りもせず、義実家にも頼らず、はじめての育児をぜんぶ自分と夫だけでやろうと決めていました。
ところが退院し、いざ生活が始まってみると、想定外のことばかり。
寝てくれないし食べてくれない。四六時中泣きまくる。
周りの子と比べて発達も遅いし、癇癪もひどい。
おむつのCMで見るような、ニコニコ笑う赤ちゃん像とはかけ離れている我が子。
育児書通りにやっても、うまくいかないことだらけ。
夫はそれなりに理解を示してくれるものの、仕事が忙しくてあまり積極的に協力してくれない。
土日以外はほぼワンオペ状態。
言葉も通じない子どもをヒステリックに叱ってしまうこともしばしば。
そして、ふたり目が生まれてからはますますカオス。
ようやく寝付いた下の子を起こす上の子。目に付いたものをなんでも投げる下の子。
きょうだいげんかの仲裁、好みのちがうふたりの食事・・・
毎日が忙しすぎて、家の中は荒れ放題、自分の髪も肌も心も乱れ放題。
飲んで帰ってきた夫とぶつかることも増えていきました。
極めつけは、二人目が生まれたタイミングで仕事を引退しヒマになった実母からの「わかったような」子育てアドバイス。
猫の手も借りたいけれど、親の手だけは絶対に借りたくないと意地になって、ますますひとりでがんばってしまいました。
そしてストレスが絶頂に達したある日・・・
下の子が「おかあさーーん」と抱き付いてきたときに、思わず「やめて!」と払いのけてしまったそうです。
あんなにお母さんみたいにならないと決めていたのに、お母さんと同じ、いやそれ以上にひどい。
お母さんには仕事という言い訳があるけれど、わたしにはない。
この現実はAさんにとって受け入れがたいものでした。
そして、ボロボロになりながら子育ての悩みを検索するうちに、わたしのサイトにたどり着かれました。
読んでくださったのはこの記事。
この記事を読んで、Aさんはご自分のインナーチャイルドが傷ついているのだということに気づき、わたしに会いに来てくださいました。
はじめてのセッションでAさんにわたしがお伝えしたことは、インナーチャイルドの癒し方。
それと「逆親軸」についてです。
親軸と逆親軸
Aさんにお話した「逆親軸」はわたしの造語です。
これは、「親みたいなりたくない」と思っている多くの人が陥るワナです。
前提となる自分軸・他人軸について先にお伝えしておきますと、
自分軸というのは、他人に振り回されずに自分の感覚感情を大切に生きていることです。
その反対が他人軸。自分の感覚感情よりも他人の目を気にして優先してしまうことです。
生きづらさを抱えている多くの人が他人軸の生き方になってしまっているのは、もう皆さんご存じかと思います。
そして、他人軸の「他人」の中でもいちばん影響力が強いのが実の親。
親の価値観で「普通は」「常識的に」「誰がどう考えても」と幼少期から繰り返し植え付けられたことが、他人軸の基礎になっています。これを親軸と名付けます。
親軸による子育てはたとえば、
- 甘やかすとロクな大人にならない。
- しつけのためには多少の体罰はやむを得ない。
- 友だちは多ければ多いほどいい。
- 男の子は、最低でも○○大学には行ってもらわないと。
- 結婚をして子どもを産み育てることが女の幸せだ。
というような親が持つ古く偏った固定観念の影響を多分に受けていて、親に対して従順な人ほど親の価値観をアップデートできないまま引き継いで同じような子育てしてしまいます。
その一方で、Aさんのように「親のようにはなりたくない」と思っている意識の高い方が陥るのが、本題の逆親軸による子育て。
何でもかんでも親の真逆を意識しすぎてしまっている状態。
過放任で育てられた人は過干渉に。
過干渉で育てられた人は過放任に。
親みたいになりたくない思いが強すぎて、ほどほどではなく真逆に強く振り切れてしまうがゆえに、それまたゆがんだ子育てになってしまうパターンです。
Aさんは、「親のように子どもをほったらかしにしない」という強い強い思いがあったので、母親としての高い理想を掲げすぎて、自分を苦しめていました。
そして、無理して余裕がなくなり、その反動で親と同じように子どもに辛く当たってしまうという皮肉なオチでした。
「あんなに親みたいな子育てはしたくないと思っていたのに、気づくと同じようになってしまっているんです。」
そんなお悩みを打ち明けてくださったのは、実はAさんだけではありません。
「親みたいにはなるまい」と誓っていたたくさんの人が、この状態に陥りご相談に来られます。
そして、もちろんわたしも同じように悩んでいた時期がありました。
子育ては自分軸で
なぜ、あんなにも親みたいになりたくないと思っていたのに同じようになってしまうのか。
それは、Aさんの子育て方針は確かに親とはちがっていたけれど、バリバリに親を意識した逆親軸だったからです。
親軸の人の子育ての根底には、「親にほめられたい」という思いがあり、
逆親軸の人の子育ての根底には、「親を見返したい」という思いがあります。
ご本人には自覚がない場合もありますが、どちらも結局は「親に認められたい」という承認欲求であり、意識が親を向いていて、肝心のわが子には向いていないのです。
自分の意識が子どもを見ていないから、子育てがうまくいかないのも当然です。
子育てで大切なことは、「親みたいに」でもなければ「親と真逆に」でもなく、「自分らしく」「この子らしく」です。
たとえ親みたいだろうがそうでなかろうが、子どもや自分に合っていればそれでOKで、合ってなければそれがどんなに素晴らしいやり方でも机上の空論で意味がないんです。
お子さんやみなさんがいちばん自然体でいられる誰にも似てない子育てこそが、本当の自分軸の子育てです。
インナーチャイルドを癒そう
親の価値観に振り回されず自分軸で子育てをするためにはまず、ご自分の傷ついたインナーチャイルドをしっかり癒してあげることが最優先です。
幼少期に負った心の傷を癒さないままでは、本当の自分軸を獲得することはできません。
癒さないまま無理やり獲得した親みたいじゃない軸は、逆親軸であって自分軸ではありません。
一見、自分軸を獲得したように見えても、親を意識した逆親軸になっているだけです。
それはいわば、おとなになってからの反抗期で、「親よりも立派な子育てをして、親を見返したい。親に自分のすごさを認めさせたい。」が密かな原動力になっているため、本当に子どものことを考えている子育てではないのです。
そのまま子育てをしていると、思い通りにならない子どもの言動にイライラして、
「あんなに親みたいな子育てはしたくないと思っていたのに、気づくと同じようになってしまっているんです。」
ということになります。
そしてまた負の世代間連鎖が続いていくのです。
「親みたいにはなるまい!」とがんばっているあなた。
ちょっといったん立ち止まって、インナーチャイルドケアしてみませんか?