万能感のワナ 自分大好きな人は自己肯定感が高いのか?
「自己肯定感」ってよく聞くけれど、それって自分のことが大好きな人のこと?
自己肯定感が高そうな人
- 話し方がえらそう
- 他人を見下している
- 自分は正しいと思っている
- 自慢話が多い
- 話の主語がいつも一人称
こんな自信満々な人、あなたの周りにもひとりやふたり、いるんじゃないでしょうか。
話していると常に上から目線で、圧を感じませんか。
自信の無いあなたからしたら、こういう人たちは自分のことが大好きで、やたら自己肯定感が高い人に見えるかもしれませんが、本当のところどうなんでしょう。
自己肯定感とは?
自己肯定感をシンプルな言葉で表現するなら、「今の自分の存在を肯定的に受け止める感覚」のことです。
キーワードは、「今」「自分」「存在そのもの」。
この3つを否定することなくまるっと愛している感覚です。
自己肯定感についての詳しい解説は、こちらの記事をご参照いただければと思うのですが、人間には長所も短所もあって、その両方(特に短所)から目を背けることなく受容してこその自己肯定感です。
この視点で見ていくと、さきほどの「自己肯定感が高そうな人」は、どうなんでしょう。
そうです。
自分の長所だけを認め愛している人です。
長所と短所が半々だとして、短所の方の半身をバッサリ切り落とした、むしろ自己肯定感の低い人です。
自分の短所を自覚しているあなたより、自己肯定感が低いかもしれません。
自己肯定感に見せかけた万能感
では、あの高圧的な態度、あふれ出る自信満々さは、いったい何なんでしょう?
それ、実は「万能感」というやつです。
「万能」という響きは良いですが、本来これは子どもだけが持っている「自分を特別なものだと思う感覚」のことです。
【万能感】
「自分は特別な人間である」「自分にはたぐいまれなる才能がある」「自分は何でもできる」という自信に満ちた感覚のこと。
自己肯定感の原型で、幼児期には誰もにこの感覚が備わっている。幼児的万能感ともいう。
小学校低学年くらいの男子にありがちな、「海〇王にオレはなる!」「ポケ〇ンマスターにオレはなる!」みたいなあの感じです。
別名「全能感」ともいい、まるで自分が全知全能の神であるかのような感覚のことです。
子どもが万能感を持つことは正常な発育過程であり、のちの自己肯定感の獲得に必要なステップです。
ところが、一定数おとなになっても万能感を持ち続けてしまう人たちがいます。
それが、前述の一見すると「自己肯定感が高そうな人」です。
手に入れたいものが現実的な地位や名誉に変わっただけで、やってることはあの日のまんまなんです。
万能感から自己肯定感へ
では、彼らがおとなになっても万能感を持ち続けているのはなぜでしょう。
それは、「万能でない自分」を受容しそびれてしまったからです。
子どもは、小学校高学年あたりからだんだんと周りが見えくるようになり、自分にも他人にも得意不得意があり、すべての面において万能な人などいないのだということを悟るようになります。
僕は算数が得意。でも国語は苦手。わたしは歌うのが得意。でもダンスはあの子の方が上手。
というように。
勝つことも負けることもあって当然、人それぞれに凸凹があってあたりまえだと実感していきます。
このように等身大の自分を知り、それでもそんな自分を受け入れ、愛おしいと思えている感覚が、自己肯定感です。
それまで、自分は何者にでもなれるという感覚で生きていた子どもが、現実に折り合いをつけることで、万能感を自己肯定感に変換していくのです。
変換しそびれる理由
では、どうして万能感を自己肯定感に変換しそびれてしまう人がいるのでしょう。
先天的な脳の特性などの影響もさることながら、この問題は、親のかかわり方の影響が非常に大きいと考えます。
その具体例は以下のとおりです。
- 過剰な「ほめ育て」をされる
- なんでも与えられ甘やかされる
- 親自身の夢を子どもに託される
- 「あなたはしっかりしている」などと評価される
- 「お母さんにはできないわ」など、親よりも優れていると言われる
- できないこともできるだろうと思われる
- 弱音を吐くことを良しとされない
- 勉強やスポーツができると褒められる
- 自分の成績がいいことを親が内心自慢に思っている
- きょうだいよりも優秀であることで認められる
逆に、
- できないと痛烈に非難される
- 何かときょうだいや周りの子どもと比較されけなされる
- バカにするような言葉を幾度も浴びせられる
- 何をしても叱られる
- やることなすこと否定される
こんな風に等身大の自分よりもひと周りもふた回りも大きな期待をかけられてしまった子どもや、逆に過度な批判を浴び続けて育った子どもは、親から受け入れてもらえない自分の短所・欠点・苦手なことなどから目を背けて、過大評価してしまうことがあります。
そしていつまで経っても等身大の自分と向き合えず、特別な自分であり続けるためにずっと万能感を握りしめたまま、身体だけ成長してしまうのです。
万能感の陰に潜む恐れ
冒頭でもお話したとおり、万能感を持つ人は、短所の方の半身をバッサリ切り落としている人です。
したがって、
- 人よりできない自分
- 失敗する自分
- 弱い自分
- 人に先を越される自分
こういう自分を自分で拒絶しており、他人の前でミスや失敗が露呈することを強く恐れます。
自分の非を認められない、ミスが発覚すると必死に取り繕おうとする、欠点を指摘されると烈火の如く怒り出す、、、
このような万能感を持つおとなに見られがちな「プライド高い言動」は、自分の拒絶している部分を他人に知られることが怖いからこそ、取ってしまうものです。
つまり、万能感を持っている人は、自分の等身大を自分を認められていないがゆえに、自分の劣っている部分を周りの人に知られることを強く恐れ、必要以上のプライドで自分をガチガチに武装している人ということになります。
「本当の意味で自分のことが好きな人=自己肯定感が高い人」は、自分にも短所や欠点があること、人は誰しも得意不得意があることなどを自覚し受容しているため、失敗すればそれを認めて改善できるし、ミスをすれば素直に謝り次に活かそうとするし、欠点を指摘されても「それはそうだ」と受け入れられます。
また、いわれのない批判などを浴びても、過度に反論したり、おおきく取り乱したりすることもないのです。
万能感 | 自己肯定感 | |
意味 | 自分の優れたところだけを受容する 自己肯定感の原型 | 長所・短所の区別なく、 ありのままの自分を受容する |
時期 | (本来は)幼少期 | おとな |
対他人 | 見下し・ライバル視 | 仲間・お互いさま |
欠点 | あってはならない・恥 | あってあたりまえ |
失敗 | 恐れる・挫折 | 次に活かせる |
万能感を手放すには
そして、ここでご理解いただきたいのは、おとなになっても万能感を手放せない人も、自分でそうしたくてしているわけではないということです。
幼少期、親に等身大の自分を受け入れられ、愛されているという実感を持つことができていれば、おとなになる過程で、それを上手に自己肯定感に変換し、余計なプライドなどを持たずにもっと楽に生きられたハズです。
「万能であることが親に愛される条件だ」「万能でなければ親は自分をいちばんに愛してくれないかもしれない」などと考え、手放すことを恐れて、こだわり続けた結果の今ですから。生存戦略として致し方なかったのです。
だから、ご自身で万能感があると思っていらっしゃる方も、どうかどうかこれ以上、ご自分を追い詰めないでください。
万能感を持っているということは、親の期待に応えようとがんばってきたから、もしくは親にもっと愛して欲しかったから。どちらにせよ、純粋な子どもの心(インナーチャイルド)がそうさせているのです。
でも、、
万能感を持ったままでは生きづらい。
それは、自分の長所の部分だけを受容し、半身で生きていくことになるからです。
周りの人にもう片方の自分(欠点・短所)を見られないよう、必死に取り繕って生きていかなくてはならないし、周りの人と自分を比較して常に勝ち続けなくてはならず、できないことへの助けも頼めず、たくさんの敵(ライバル)に囲まれてしまうからです。
万能感を手放せないままおとなになった人が、それを今から自己肯定感に変換していく術。
それが、インナーチャイルドケアです。
等身大の自分よりもひと周りもふた回りも大きな期待をかけられてしまったあのときの自分、過度な批判を浴び続けて育った自分。
万能感を手放せなかった理由に気づいて、そのときの幼かった自分に心を寄せると、頑なさは解けていきます。
もうそんなにがんばらなくてもいいんだ。人に弱みを見せても大丈夫なんだ。
インナーチャイルドがそう気づいて心から安心できたとき、万能感は自己肯定感に変わっていきます。
残りの人生、万能感を手放し、等身大の自分で、周りの人と縦ではなく横でつながって、楽しく生きてみませんか?
自然体で、自分らしく生きていきたいと思えたら、ぜひ入門講座へお越しください。
【まとめ】
●自己肯定感とは、今の自分の存在を肯定的に受け止める感覚のこと。長所も短所もどちらも受容して愛していること。
●自信満々で高圧的な人は、一見自己肯定感が高そうに見えるが、実際はその逆。自分の短所を切り離して半身で生きている自己肯定感の低い人。
●自信満々で高圧的な人は、万能感を持っている人。
万能感とは、「自分は特別な人間である」「自分にはたぐいまれなる才能がある」「自分は何でもできる」という自信に満ちた感覚のこと。
●万能感は、自己肯定感の原型であり、幼児期には誰もにこの感覚が備わっている。
●本来、成長過程において、現実に折り合いをつけることで、万能感を自己肯定感に変換していく。おとなになっても万能感を持っている人は、その変換作業をしそびれてしまった人。
●変換しそびれる理由はいくつか考えられるが、中でも親の影響が大きい。
①過度なほめ育てなどで、等身大の自分よりもひと周りもふた回りも大きな期待をかけられてしまった子どもや、②過度な批判を浴び続けて育った子どもは、親から受け入れてもらえない自分の短所・欠点・苦手なことなどから目を背け、いつまで経っても向き合えない。
●万能感の強い人は、自分の短所や欠点を拒絶しているため、他人の前でミスや失敗が露呈することを強く恐れる。
●万能感の強い人は、自分での等身大を自分を認められていないがゆえに、自分の劣っている部分を周りの人に知られることを強く恐れ、必要以上のプライドで自分をガチガチに武装している。
●万能感を持っているということは、親の期待に応えようとがんばってきたから、もしくは親にもっと愛して欲しかったから。どちらにせよ、純粋な子どもの心(インナーチャイルド)がそうさせている。
●おとなになってから万能感を自己肯定感に変換するには、インナーチャイルドケア。
●万能感を手放せなかった理由に気づいて、そのときの幼かった自分に心を寄せると、頑なさは解けていく。
●「もうそんなにがんばらなくてもいいんだ」「人に弱みを見せても大丈夫なんだ」インナーチャイルドが心からそう思えるようになったとき、頑なさはほどけ万能感は自己肯定感に変わっていく。
●万能感を自己肯定感に変換したいのなら、インナーチャイルドケアに取り組んでみよう。