過去のことを思い出せないとインナーチャイルドは癒せない?
「インナーチャイルドケアに興味はあるけど、昔のことあんまり覚えていないんですよねー」とおっしゃる方がいます。
わたしはインナーチャイルドを癒すのに、無理やり過去のことを思い出そうとする必要はないと思っています。
退行療法はしていません
「インナーチャイルド」と聞けば、多くの人がイメージするのが退行療法じゃないかと思います。
インナーチャイルドヒーリング、退行セラピー、いろんな名前で呼ばれていますが、簡単に言ってしまうと、イメージの中で小さな自分に会いに行き、声をかけ癒すというもの。
セラピストさんのガイドにより、瞑想状態に入り、過去の記憶にさかのぼって、傷ついた幼い自分を癒します。
たとえば、3歳のときにひとりでお留守番をしている自分の側に行って、「こんにちは。わたしは30年後のあなたです。そこで何をしているの?」みたいに声をかけて、対話をしながら癒していくやり方。
退行療法はインナーチャイルドの癒しの中でも最もメジャーな技法なので、受けたことがある方も多いかもしれませんね。
わたしのところに来られる方は、わたしがそういった施術をしないことに驚く方もいます。
わたしがそういうのをしないと知って、それなら受けてみたいと来られる方もいます。
そうなんです。わたしはいわゆる退行セラピーはしませんので、もしそのような施術をご希望でしたら、ご専門の方のところに行くことをお勧めします。
そして、そういうのなしでインナーチャイルドを癒してみたいと思う方は、一聞の価値ありかなと思います。
なぜ退行療法をしないのか
念のため先にお伝えさせていただきますと、わたしは決して退行療法に効果がないと思っているわけではありません。
むしろ大きな傷つき体験を癒すのに、そのようなセラピーを受けられるのは、めっちゃいいと思っています。
実際に腕のいいセラピストさんに出会って良くなったとおっしゃる方にも会いました。
否定的な気持ちは一切ないことを表明しておきます。
ではなぜわたしが退行療法をしていないのか。
それは、インナーチャイルドが傷つき癒しを必要としている人(アダルトチルドレン)の多くが、ひとつのできごとではなく、複数の反復的な体験により、心に傷を負っているから。
つまりは、「発達性トラウマ」を持っているからです。
▶参考:原因不明の生きづらさは「発達性トラウマ」のせいだ!!
発達性トラウマの詳細については上記の記事をご覧いただければと思うのですが、簡単に言ってしまうと、トラウマにはひとつのショッキングなできごとで心にダメージを負う「単回性トラウマ」と、反復的な傷つき体験で心にダメージを負う「複雑性トラウマ」があり、複雑性トラウマの中でも発育課程で幼少期に負ったダメージのことを「発達性トラウマ」といいます。
わたしが、専門にしているのは単回性トラウマではなく、「発達性トラウマ」なのです。
発達性トラウマは日常のごくありふれた生活の中でジワジワと負う心の傷なので、明確に思い出せないのがあたりまえですし、それがご自分にとっては普通のこと過ぎて、トラウマだと気づけなかったりもします。
それに感情の抑圧が強い人は、昔のことをサッパリ覚えていないという人も多いのです。
別に何をされたってわけじゃないけど、
- お母さんはわたしよりも他のきょうだいのことが好きだと感じていた。
- お母さんになにかを訴えると面倒くさそうな顔をされてばかりいた。
- 離婚には至らなかったけど、お父さんとお母さんは愛し合っていなかったと思う。
- 親がよろこびそうなことを常に考えて行動していた。
- お母さんは自分を犠牲にして家族に尽くしてばかりであまり幸せそうには見えなかった。
こんなこと。発達性トラウマってこんなことでできていきます。
暴力もない、育児放棄もない、目立ったトラブルもない。どこの家庭にも多少はありそうなこと。
そんなことで幼い子どもはちいさくちいさく傷を負っていく。まるで低温やけどみたいに。
それをひとつひとつ拾って退行セラピーをするなんて途方もなさすぎるし、そもそも思い出せないのでは癒しようがない、となってしまいます。
だから、わたしは退行セラピーではなく、「今起きていることの感情体験を癒す」というオリジナルの方法を用いています。
このメソッドでは、過去のことを思い出せなくてもインナーチャイルドケアは可能です。
癒すのはできごとではなく感情体験
といわれても、そんなオリジナルのやり方うさんくさい、って思っちゃいません?そりゃそうですよね。
だけどわかっているのは、トラウマはできとごそのものではなく、感情体験の記録であるということ。
できごと自体はわりとどうでもよくって、あなたがそのできごとからどんな感情体験をしたかが重要です。
そのときに封じ込めてしまった感情エネルギーを外に出してあげることが、トラウマ解消に必要なことなのです。
ということはつまり、そのときの感情体験さえしっかりつかめれば、できごとそのものを思い出さなくても癒せるというわけです。
そして、すばらしいことに(はじめはそうは思えないのだけれど!)、封じ込めた感情エネルギーはただ黙ってあなたの中でおとなしくしているわけではなく、わたしたちの日常生活に再体験として現れてくれます。
上司、同僚、後輩、友人、知人、近所の人、恋人、パートナー、子ども・・・
あなたを煩わせるその人によって、あなたの中に封じ込めた感情エネルギーは日々再起されているのです。
その再起されている感情に気づいてインナーチャイルドの癒しをすることが、わたしのお伝えしているインナーチャイルドケアメソッドです。
向き合うのはできごとではなく感情体験なので、そのつかみ方さえわかれば、わざわざ過去を掘り当てて退行しなくても癒すことはできるという仕組みです。
もちろん、その中で必要な過去の振り返りはしていただきますが、思い出せないと癒せないのかというとそんなことはないのです。
文章で説明するとわかりづらいですよね;
伝わりますでしょうか?
必要な気づきは必要なときに訪れる
さらに興味深いのは、そうやって日々のことに丁寧に向き合っていくと、不思議とハラリハラリと昔のことが思い出されるようになります。
「そういえばわたし、あのときこんな風に思ったな」とか「あんないい方されてすごく嫌だったんだよな」とか、インナーチャイルドを癒す中でごくごく自然な形で思い出させてくれます。
そのときにしっかりと感情に向き合うことで、またインナーチャイルドの癒しは進みます。
そんな風にして、無理に底の方からほじくり返さなくても、強引にかさぶたをひっぺがさなくても、目の前のことに向き合っていけば、今のあなたにぴったりなものがベストなタイミング目の前に現れてくれるようになってます。
それはまるで、インナーチャイルドがあなたに「今、これを癒してほしいよ」と持ってきているみたいに。
講座でサポートをさせていただいていると、自分の内側に真摯に向き合うお客さまは、ちゃんと必要なタイミングでインナーチャイルドからのメッセージを受け取っています。
その見事なコンビネーションを側で見ていると本当に感動しますし、わたしたち人間がジタバタしなくても、幸せになるために必要なことはぜんぶ用意されているんだなと思えます。
退行しないインナーチャイルドケア。
もしご興味があったら、入門講座にいらしてくださいね!
【まとめ】
●ICCMでは、退行療法をしていない。
●退行療法をしないのは、アダルトチルドレンの多くが、ひとつのできごとではなく、複数の反復的な体験により、発達性トラウマを負っているから。
●発達性トラウマは日常のごくありふれた生活の中でジワジワと負う心の傷であるため、明確に思い出せないのがあたりまえ。また、それが普通のこと過ぎて、トラウマだと気づけなかったりすることもある。
●過去の小さなできごとをひとつひとつ拾って退行セラピーをするのは不可能。また、思い出せないのでは癒しようがない。
●トラウマはできとごそのものではなく、感情体験の記録。できごとからどんな感情体験をしたかが重要。
●封じ込めてしまった感情エネルギーを外に出してあげることが、トラウマ解消に必要なこと。
●感情体験さえしっかりつかめれば、できごとそのものを思い出さなくても癒せる。
●再起されている感情に気づいてインナーチャイルドの癒しをすることがICCMのインナーチャイルドケアメソッド。
●目の前のことに向き合っていけば、今のあなたにぴったりなものがベストなタイミング目の前に現れてくれる。