お母さんのための「子どものいじめ」減災マニュアル
「うちの子が学校でいじめを受けているかもしれない。」
そんなご相談をいただくことがあります。
そのときにわたしがどうお答えしているかを、減災マニュアル的にこちらに書き留めておきます。
もちろん、いじめの対応はケースバイケースであることは言わずもがな。
お子さんの年齢、学校の状況、お相手の様子などによっても対応は異なりますので、あくまでご参考まで。
まずはいったん深呼吸
我が子のピンチとあれば、動揺するのも無理はありません。
特に、自分も子どもの頃いじめられたり人間関係で苦労したりした経験があるお母さんは、自分と子どもを重ねて、大きな恐怖に襲われることでしょう。
(わたしのお客さまであるアダルトチルドレンは、学校生活にあまりいい思い出がない人が多いです。)
でも、誤った初期対応をしまうと、問題が長引いたり、他のところに飛び火したりします。
まずはいったん落ち着いて深呼吸。
スマホを手放して静かな場所に座り、意識を内側に向け、インナーチャイルドの声に耳を傾けましょう。
子どもの気持ちを受け止める
次の急務はこれ。
学校への連絡とか事実確認とか、すぐにでもいろいろ動きたくなると思うけれど、まずはお子さんの話をよーく聞きましょう。
聞くと言っても事情聴取ではありません。
実際にあったできごとではなく、お子さんが「何を感じているか」に注目します。
根掘り葉掘り質問するのではなく、できるだけ聞き役に徹します。
お子さんの「怖い」「悲しい」「悔しい」「恥ずかしい」
こういう気持ちを汲み取って、丁寧に寄り添います。
- そっか。怖かったよね。
- それは悲しかったね。
- そんな風に言われて、悔しかったよね。
- みんなの前で言われたの、恥ずかしかったんだよね。
こんな風に声をかけてもいいし、背中をさすったり抱きしめたりして、
「お母さんそばにいるよ」
「お母さんはあなたの気持ち受け止めるよ」
ということを全身で伝えてあげてください。
お子さんの心にお母さんという心理的安全基地を作ること、それがいじめの初動対応です。
子どもの身の安全確保
そしてもちろん、身の安全確保。
実際に暴力的なことがあったり、お子さんの身に危険が生じているようであれば、それはできるだけ早く対応が必要ですね。
学校など関係各所と連絡を取って、子どもが安全に学校に通えるようになるまで、できることならお家で見守ってあげたいです。
よくあるNG対応
やりがちだけど事態が悪化する可能性大な対応はこちら。
子どもへの事情聴取
- 誰に言われたの?
- なんて言われたの?
- 先生はなんて言ってたの?
気持ちを受け止める前に質問しまくる。
これ、傷ついたお子さんにはしんどいです。
まずは、気持ちを受け止めて、事態の把握は落ち着いてからゆっくりで。
気持ちが乱れている状態で無理に聞き出そうとすれば、わかってほしいという思いから、実際のできごと以上に誇張して話したりもします。
それを真に受けて、学校や相手の保護者に連絡をすれば、取り返しのつかない事態にもなりかねませんね。
いじめた相手を子どもの前で非難する
- マジむかつくね。
- そんなことするやつがバカなんだ。
- お母さんぶんなぐってやりたいよ。
子どもをかばおうとするあまり、つい相手のお子さんを非難してしまいがちですが、それはちょっと待ったです。
お子さんがお母さんたちの前でお友だちを非難するのはかまいませんが、お母さんたちがそれに乗っかって相手を悪く言うのは、あまりいい方法とは言えません。
怒りに怒りを重ねても怒りの炎が燃え広がるばかりです。
友だち親子のようになって、周りに敵だらけにしてしまいます。
大事な役割は、「子どもの気持ちを受け止める」こと。
一緒になって非難するのではなく、「あなたがそう思うくらい嫌だったんだよね、悔しかったよね」と子どもの気持ちを受け止める役に徹してください。
パニックに陥ってあちこちに相談する
動揺して、慌てて職場にいる夫に連絡する、母親に連絡してきてもらう。
そんなことをする方も少なくありません。
でも、お母さんの慌てふためいた様子を見たお子さんは、余計に重大なことが起きたような気持になり、恐怖が増してしまうでしょう。
できることなら、自分の気持ちは自分でインナーチャイルドケアをしてください。
そして、お子さんの心理的安全基地を意識して、できるだけ受け身の構えでいましょう。
無理に登校させる
お子さんがもし、いじめが理由で休みたがっているのなら、できれば休ませてあげてほしいなと思います。(もちろんご家庭の事情で致し方ないこともあると思いますが。)
「いじめる方が悪いのに、うちの子が休まなきゃいけないなんて」
そう憤るお気持ちは、よくわかります。
「ここで逃げてしまうと、一生逃げ癖が付く」
そのお気持ちもよくわかります。
でも、学校という狭い世界で生きているお子さんにとって、いじめに遭うということは世界中が敵になるような恐怖です。
「お母さんのそばにいれば安心・安全。」
お子さんがピンチのときには、まずはそういう感覚を持たせてあげたいです。
感情に任せて学校や相手の親に苦情を言う
もう、これが最悪の対応だなと思います。
いくらこちらの言い分が正しくても、感情的に文句を言うだけでは、何の解決にもなりません。
それどころか、「こんなに感情的になる親なんだから、家庭に問題があるんじゃない?」なんてモンペ扱いされて、逆に立場が悪くなってしまう可能性も大です。
いじめられたうえ理解されないなんて悔しい、悔しいですよね。そのお気持ちは本当によくわかります。
でも、先生も人間なので、一方的に責められれば防衛が働きます。
相手の親御さんも、こちらの出方が敵対的であれば、態度を硬化させる可能性が高いです。「非を認めたら負け」みたいに頑なになってしまうことでしょう。
おとなたちが、自分の身を守ること、苦情を言われないように振る舞うことに意識が働いてしまい、肝心の子どもの世界の問題解決が遠のきます。
そして、学校との信頼関係が崩れてしまえば、いじめがなくなったあとも、お子さんにとってあまりいい環境にはならないかもしれません。
「いいえ、わたしは冷静です!」
そういいながら鼻息が荒い方もよくお見掛けしますので、お子さんのためにもここはひとつ冷静に。
気を付けたいことは他にもいろいろありますが、一番心に留めておきたいのは、ピンチなのはお子さんであって、お母さんではないということ。
自分の感情に振り回されて危うい対応をしないように心がけましょう。
感情が乱れたときには、静かなところでご自分のインナーチャイルドと向き合ってください。
いじめられているお子さんが本当に望んでいること
わたしは、日々たくさんのアダルトチルドレンのお客さまとお話をしています。
小学生や中学生の頃、ご自身がいじめに遭っていた経験をお話してくださる方も少なくありません。
その中でわたしがわかったことは、いじめに遭っているお子さんがお母さんに望んでいることは、学校に文句を言ってくれることでも、相手を懲らしめてくれることでもないってことです。
- お母さんだけは味方でいてほしい
- お母さんだけはわたしのこと守ってほしい
- お母さんだけには本当のことを話して受け止めてほしい
- お母さんだけは休みたい逃げたい気持ちを理解して尊重してほしい
- お母さんだけにはどーんと構えていてほしい
望んでいるのは、こんなことです。
ピンチのときにお母さんが安全基地として機能してくれたかどうか、ということがその子のその後におおきなおおきな影響を及ぼします。
ところが、
「お母さんに言うと話がややこしくなりそうだから黙っていた」
「お母さんに言っても味方してもらえず、無理やり学校に行かされた」
「お母さんに言ってもパニックになるばかりで、わたしの心は癒されなかった」
「お母さんに言ったらお母さんの方が怒ってしまい、収拾がつかなくなった」
「お母さんが学校にクレームを入れてしまい、問題がおおきくなってしまった」
こんな話を本当によく聞きます。
いじめられた時点でお子さんの心は深く傷ついています。
お母さんの対応の不得手で二次的にお子さんの傷を悪化させないことが大事です。
(だから、防災マニュアルではなく、減災マニュアルというタイトルにしました。)
外に出れば、嫌なこともある、嫌なヤツもいる。
まじめにやってても傷ついてしまうことはある。
でも、お家という帰る場所があって、お母さんの温かい腕の中で守らていた記憶があれば、それはその子のこれからの人生のおおきなおおきな支えになるのです。
お子さんには、お母さん。
お母さんのインナーチャイルドには、お母さんのインナーマザー。
が不安定なときこそ、安定したお母さんのメンタルが大切。
だからこそ、有事に備えてお母さんたちはご自分のインナーチャイルドをケアする方法を知っておいていただきたいなと思います。